Solanoの鉄旅駅旅ブログ

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移転先『ある日、旅の空で…【新装版】

シティナイトライン2階建て車両デラックス個室、ハンブルグ‐チューリッヒ中央駅乗車記

シティナイトライン、憧れの2階建て車両

 ドイツを中心にヨーロッパで運行される夜行列車、シティナイトライン(City Night Line: CNL)は鉄道に詳しくなくても、ヨーロッパ通にはよく知られた存在だと思います。

 CNL社はドイツ連邦鉄道、スイス国鉄、オーストリア国鉄の出資で、1995年にホテル並みのサービスを掲げ運行開始となりました。その象徴的な車両が2階建の個室寝台です。2階部分には主にシャワー・トイレ付きのデラックス個室が配置され、1階部分にはエコノミー個室が配置されました。その他、リクライニング角度が深い座席車両や食堂車も特徴的でした。当時、日本ではブルートレインなど夜行列車衰退の兆候は既にあり、そんな中、海の向こうでは、こんなに快適そうでユニークな夜行列車が登場したのを知り、驚きと共に羨ましい気持ちで眺めていました。

 その後、車両はクシェット(簡易寝台。日本のB寝台相当)やコンパートメント座席車、2階建てでない個室寝台車両なども連結されるようになり、また運行業者は紆余曲折を経て、現在ではドイツ鉄道の長距離輸送部門となっています。

 かつてエコノミー個室は利用した事があるのですが、やはり2階部分にあるデラックス個室をいつかは利用したいものと思っていました。そこで2008年1月のヨーロッパ旅行で、2階建て車両の投入路線を調べて、CNLを行程に組み込みました。しかし、12月のダイヤ改正で投入車両が変ってしまい、来たのはコンフォートライン呼ばれる2階建てでない車両だったという苦い思い出があります。

 そこで今度こそはと思い、今回のヨーロッパ旅行でも懲りずに組み込みました。幸いドイツ鉄道のシティナイトラインのウェブサイトで、2階建て車両の投入路線が公表されています。その5つの路線の中から、CNL479・ハンブルグ‐チューリッヒ線を選びました。

デラックスルームの設備は…

 当日、CNL479・チューリッヒ行きの始発駅、ハンブルグ・アルトナ駅の地下で食事を済ませました。本当は食堂車で食事したかったのですが、近年、CNLでさえ食堂車の連結は縮小傾向のよう。ヨーロッパの鉄道時刻表でCNL479の注釈を見たら、一応は連結はされているようです。しかしCNLのウェブサイトでメニューを見たら、サンドイッチとかソーセージなど軽食程度で、ディナーになるようなものは残念ながら無く、乗車前に食べておきました。

 19時40頃、プラットホームに上がると、チューリッヒ行きCNLが推進運転で入線してくる所でした。

ハンブルグ・アルトナ駅に入線したCNL

 長い旅のはじまりとなるターミナル駅ですが、ホームは思いの他、ひっそりとしています。ハンブルグ中央駅など市内いくつかの駅で止まり、細かい需要に応えているのでこんなものなのでしょう。

 さて、長い編成から今宵の宿となる個室寝台を探さなければいけません。ホーム端から編成を眺めつつ先頭の方に歩きます。一両一両見ていくと、クシェットや2等座席車ばかりが目に入り、一目で解るだろう2階建て車両はいっこうに目に入ってきません。

 残すところあと数両となった時、電気機関車の次に連結されている車両が風体があきらかに違います。あれだろうかと歩みを進めると、やはり上下に窓がたくさん並んだ2階建て車両。今日は9両編成のようですが、個室寝台はこの1両だけです。登場時は個室主体の編成でしたが、今ではクシェットや座席車が幅を効かせているよう。この日の個室寝台はエコノミーも含め売り切れとの事。手数料が高くつきましたが、日本であらかじめ購入しておいて良かったです。

CNL2階建て車両

 軽く撮影した後、車内に入りました。ドリンクなどを用意するサービス準備室前を通り抜けると、個室の扉が並ぶ廊下に出ました。そして今宵のベッドとなる102のある部屋を見つけ階段を上がり、念願だったCNL2階建て個室寝台のデラックスルームに入りました。

CNL、デラックスルームへの階段 CNL2階建て車両、デラックスルーム

 まず「きれいだな」と第一印象を感じました。登場から20年になろうとしていて、かなりくたびれてきているのではと思ったのですが、メンテナンスはしっかりしているよう。室内は、天井近くにある2つの天窓も含め4窓を占有する広さです。外の光をたくさん取り込め明るい雰囲気で、眺めも期待できます。

 室内の中程にテーブルと椅子があり、隅にベッドがあります。惜しいのがテーブルの部分に、窓と窓の境目にあり、眺望の妨げの感が…。窓をまとめて大きくして欲しい所ですが、車体強度とか何らかの理由でこうなったのでしょう。

 ベッドは部屋の隅に枕木方向に配置されています。寝台車では座席をベッドに変換して兼用するパターンも多いですが、その手間がありません。2人利用ならもう一つベッドが出されているのですが、シングル利用という事で、ベッドは壁に収納されています。面白いのが横向きにベッドを畳んでいるのではなく、縦向きに足元の方に跳ね上げる形で収納しています。

CNL2階建て車両デラックスルーム2

 ベッドの反対側には衣類などの収納スペースと、トイレ・シャワーがあります。

 2階建てという事で、高さは若干狭いですが、165cmの私には動くには不便の無い高さです。その代わり床面積は個室寝台としては十分な広さがあります。

CNL2階建て車両デラックスルーム、トイレ

 収納スペースの横の扉を開けると、ユニットバスです。1畳に満たないと思われるスペースに、洗面所、トイレ、そして写ってはいませんが右横にシャワーも詰め込まれています。ちなみに、ここの髭剃り用のコンセントが、たぶん室内唯一のコンセントでした。今ではICなどヨーロッパの都市間列車では、座席にコンセントがある車両が少なからずあるのですが、登場時の1995年は、携帯電話やノートパソコンも一般的ではなく、充電という需要も少なかったからなのでしょう。

CNLデラックスルーム、飲食メニュー

 テーブルの上にはミネラルウォーターと、飲食物のメニューが置かれていました。見てみると、食べ物は、パスタ、ソーセージなど、オーブンで最終調理すると思われるいくつかホットミールの他は、サンドイッチ、スナック菓子など、無いよりはいいと言った程度のもの。ドリンクはコーヒー、紅茶などソフトドリンク、ビール、ドイツワインなどを取り揃えていました。

 夕暮れの中、一路チューリッヒへ

 そして、定刻の19時57分、ようやく夕方の色を帯びてきたハンブルグ・アルトナ駅を出発しました。

CNL2階建て車両、廊下

 ゆっくりとハンブルグの街並みを眺めながら走り、1駅停車した後に、ハンブルグ中央駅に停車。さすがにハンブルグ最大の駅だけあって、ホームには何人もの乗客が待ち、個室寝台にも何組が乗車がありました。

CNL車窓、ハンブルグの港

 そして中央駅を出ると、先程より速度を増し、いよいよ旅の始まりという実感を強くしました。暮れゆく港町ハンブルグの風景を眺めながら、この街での思い出をかみ締めました。

 中央駅を出てしばらくすると、検札が始まりました。その後、朝食の時間、ウェルカムドリンクの希望を聞かれたり、簡単な部屋の案内もしれくれました。食堂車について質問してみると、乗車した時、目にしたサービス準備室の方を指し「mini bar」と言っていました。どうやら食堂車は無いようで、テーブル上にあったメニューが取って代わっているようです。そう言えば、アルトナ駅ではそれらしい車両は見かけませんでした…。

 あとルームキーも渡されなく、相変わらず無いようです。以前、2階建て車両のエコノミールームに乗った時も鍵が無く、食堂車などへ外出する度に、係員の方を呼び出して部屋の鍵を掛けてもらったものでした。(※もちろん中から鍵は掛けられますし、コンフォートライン車両の方にはカードキーがあります。)

 検札が終わり、少ししてオレンジジュースを貰うと、ようやく誰にも煩わされないホッとする時間が来ました。飲物かサンドイッチを買ってみようかと思いました。もしかしたら個室までデリバリーしてくれたのかもしれません。しかし、部屋を見回してもインターフォンらしきものは無く、かと言って部屋を出て注文に行くのも面倒なので、結局頼みませんでした。

CNL2階建て車両デラックスルーム、夜

 シャワーを浴びさっぱりすると、外は完全に夜の風景に…。湯冷ましにテーブルの上にガイドブックと時刻表を広げ明日のスイスでのプランを練り、撮影した写真を見て今日の思い出を振り返っていると23時。もうそろそろベッドに入ろうと思いました。列車は順調に走っているようです。

翌朝、CNLは国境を越えスイスへ

 そして何度か目を覚ましつつも、私としては割と良く眠れ、朝の5時過ぎにベッドから出ました。

CNLデラックスルームの朝食

 車窓風景を楽しみつつダラダラと身支度を整えていると6時を過ぎ、係員の方が朝食を運んできてくれました。内容はパン2つ、オレンジジュース、コーヒー、ヨーグルト、ジャム、塗るチーズ、何か肉のペースト、バター。2008年に乗車した時はチーズやハム数種もあったのですが、現在ではカットされたようです。パン2個で塗るものをこんなに持ってきてもらってもと思います。でも、自室から車窓を楽しみながら食事を頂けるのは、なんとも贅沢なひと時です。

ドイツ鉄道側バーゼル駅、バディッシャー駅

 いつの間にか国境を越え、スイスとドイツの国境の駅の一つ、バーゼル・バディッシャー駅へ。スイス領内ですが、駅の管轄はドイツという国境駅らしい複雑さです。

スイス国鉄側、バーゼル駅、SBB駅

 バディッシャー駅を出ると、列車はライン川を越えゆっくり進み、数分後にはバーゼルSBB駅で停車。こちらはスイス国鉄管轄の駅で、プラットホームの各種表示や行き来する車両がスイス国鉄のものへと一気に変り、スイスに入ったのだなという実感がようやく湧いてきます。まだ7時過ぎですが、スーツ姿のビジネスマンなど、列車を待つ人々が多かったです。

CNL2階建て車両デラックスルームの朝

 この日は残念ながら、小雨がぱらつく天気です。しかし広い窓から降り注ぐ朝の光が、闇夜を駆け抜けた列車で過ごした私の目にはいっそう眩しく映り、1日の始まりを強く実感しました。

CNL、スイス内の車窓

 車窓の外にはスイスののどかな風景が広がります。眺めが遮られる椅子ではなく、ベッドに座ればよりワイドな眺めを楽しめ、車窓を眺める時は、ほとんどベッドの上にいました。

CNL車窓、バーデンの眺め

 スイス有数の温泉地として有名なバーデンの街並みが広がると、最後の停車駅・バーデンに停車。

ハンブルグ発のCNL、終着駅のチューリッヒに到着

 そして、どんどん街の風景へと変り、終点のチューリッヒ中央駅に到着。13時間近い長旅でしたが、とても快適で、まだ乗っていたいという気持ちでいっぱいのまま、プラットホームに足を下ろししました。最後に惜しむようにCNLの編成に沿ってプラットホームを歩いてみると、いつの間にかアムステルダム発のCNLも連結されていました。

CNL2階建てデラックス個室、総括すると…

 念願のシティナイトライン2階建て車両のデラックス個室を体験できた訳ですが、総括すると大満足でした。私は夜行列車が好きでトワイライトエクスプレスや、北斗星のロイヤル、カシオペアのツインルームにも乗車した事があるのですが、ハード的にはこのCNLの2階建て個室が一番の好みです。

 いくつか理由を挙げると、2階建てという事で部屋の高さはあまり無いのですが、その代わり面積が広く感じました。平屋建ての車両だと天井が高いのですが、その分、上部がやや暗くなる感がありました。特に、翌日、ザグレブへの夜行列車に乗った時、妙に暗く感じ、それなら床面積が広く、窓が広い方がいいなと思いました。また窓が広く、眺めが良かったのはもちろん、差し込む光に車内で朝を存分に感じられたのはとても印象的でした。

 また廊下からやや高い2階部分に客室があり、結果として部屋が若干隔絶されている感があり、人々が廊下を行き来する気配があまり気になりませんでした。これも翌日のザグレブへの列車と比較しての事ですが…。

 食堂車が削減されたり、ルームキーが無いなど、いくつかのマイナス点はありますが、それでも快適で、ドイツに行ったらまた利用したい列車だと思います。

追記: CNLからナイトジェットへ…

]

 2015年12月ドイツ鉄道はシティナイトラインの運行を取りやめた。しかし、捨てる神あれば拾う神ありで、CNLの路線網の多くはオーストリア国鉄(ÖBB)が受け継ぎ、新ブランド「Nightjet(ナイトジェット)」として運行されている。


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